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8/19 岡田 将先生の審査総評

第1日目

多くの参加者と御父兄のみなさま、日々ご指導されている先生方、それから関係者の方々の多大なるご協力によってコンクールを無事に開催できましたことを祝福し、心より感謝とお喜びを申し上げます。

 

今日は、時間にすれば長丁場な1日でしたが、終わってみれば心地よい疲れとなんとも言えない充実感に満たされていました。
 毎年のようにレベルの上がるコンテスタントたちの演奏に驚かされますが、今回もそのような期待を裏切りませんでした。本日開催された小学校B2, 大学生、高校生部門、シニア部門、のすべての部門において非常に高い完成度の演奏を堪能しました。

 

レベルが高いということのほかに、今回はいつもとは違う何かしら別の変化を感じました。演奏を聴きながら、これは一体どういうことなのだろう?と思いを巡らせていました。

 

集中度が高いから?
ちゃんと丁寧に譜読みをしているから?
自分の言葉で音楽を紡いでいるから?
テクニックやアーテュキレーションなど全ての要素において完璧であるから?
主張がはっきりしているから?
などなど……
しかしその全てに当てはまりそうでもあり、そうではない気がする。そもそも演奏をそのような物差しに当てはめて評価するものではない気がしますし…。

 

みなさんの素敵な演奏を聴きながら私が思っていたことは、作品の素晴らしさをしっかりと伝えていた演奏がすごく多かったことです。そしてそこにはちゃんと魂が宿っていたことです。

 

例を挙げてみますと、リストの「森のささやき」の出だしのなんとも言えない独特な雰囲気をあの音の組み合わせと並びで表現できることを思いついたことはすごいと思いませんか?
曲が始まった途端、深い森と月に照らされる湖を思い浮かべ、そこから展開するドラマに息を呑みました。

 

ドビュッシーの水の反映の色彩感も本当にすごいと思います。水面に映る雲の流れや、その雲の間から光が差し込んだり、曇ったり、、雨が降ったり……きっと暖かくなりはじめて新芽が芽吹く5月あたりの空気の温もりなんだろうな……とか思い描いたり。

 

シニア部門で演奏してくださったベートーヴェンの「エリーゼのために」では叶わぬ恋への儚さや葛藤、そして諦めなどが手に取るように見えてきて、作品の新たな魅力にも気づけました。

 

演奏でそのような世界を描けるなんて!
本当にすごいことだと思いますよ!
私はずっと感動していました!

 

今日はたまたま時系列で古典派からロマン派、印象派、近現代と並んでいたから、その系譜を辿ることができた面白さもありました。

 

今日はなんだかすごい体験をした気がします。

 

また、みなさんが作品を通して作曲家と対話して作った世界に触れることができることを楽しみにしています!

 

本日は誠におめでとうございました。

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